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就業規則

就業規則とは

 従業員の就業上遵守すべき規律および労働条件に関する具体的細目について定めた規則類の総称といえます。労働基準法により常時10人以上の従業員を使用する事業所に作成、行政官庁への届出が義務付けられています。

 作成、届出を怠った場合、30万円以下の罰金に処せられますが、罰則があるからしかたなく作成するというよりも、実際のところ従業員が10人にもなれば、何らかの明文化されたルールを定めることが必要となってくるでしょう。

 尚、”常時10人以上”とは年間を通じておおむね10人以上の従業員を使用していることを指し、ある月に一時的に7〜8人になったとしても、年間でおおむね10人以上であれば作成、届出の義務が生じます。また、従業員の人数にはパートやアルバイトも含まれますので注意が必要です。



就業規則は機能しているか
 御社の就業規則はちゃんと機能していますか?

 せっかく作成してもどこかにしまいこんだままで従業員が内容を知らなかったり、何年も前に作ったきりで法改正の対応をしていない就業規則では、あっても意味がありません。

 また、必要性にせまられて書籍等から仕入れてきた就業規則のひな型を、深く考えずに自社用に多少変更して使っている会社も多いと思いますが、、法律的には問題がないにしても、これでは自社の実情を反映した内容になっているとはいえず、会社の発展を考える上では「あまりにももったいなく」、リスク管理の上では「あまりにも危険」といわざるをえません。

 ひな型の内容の多くはあくまで一般的・原則的なものであり、大企業なら問題ないにしても中小企業で採用するのはどうか、といった内容のものも見受けられます。作っても守れなければ意味がありません。

 もちろん法律の遵守を第一としますが、自社独自の考え方や価値観、企業風土といったものを反映した、実践的で身の丈にあった就業規則が求められるところです。



就業規則にまつわるトラブル事例

1.事例条文
(適用範囲)

 この就業規則は、すべての従業員に適用する。ただし、パートタイマー及びアルバイトである従業員については、別に定めるところによる。

(トラブル内容)
 従業員18名の食料品製造業のA社で、パートタイマーとして創業当時より10年以上働いてきたSさんですが、家庭の事情により退職することとなりました。

 長年働いてきたSさんは当然退職金も出るものと思い、いくらもらえるのか総務担当の社長の奥さんに確認にいったところ、「正社員じゃないので退職金はでない」と言われがく然としました。

 納得できないSさんは社長に直談判することになり、「去年退職したTさんは私より仕事が遅いし、勤続年数が少ないのに退職金をもらっているじゃないですか!」と食い下がりましたが、社長は、「Tさんは正社員だ、急な残業などもしてもらっていたんだ!」と言ってとりあってくれません。

 主婦でもあるSさんは残業ができなかったためパートの身分でしたが、フルタイム勤務のうえ正社員並みに働いてきたという自負もあり、どうしても納得がいきません。

 労働基準監督署に相談することにしました。

(結末)
 労働基準監督署より連絡を受けて出頭した社長は、監督官に持参した就業規則のチェックをうけた後、“パート、アルバイト用には別に定める”と記載してあるにもかかわらず別規則等を作成していないことを指摘され、同様のケースで退職金を支払うように命じた裁判の判例があると言われました。

 社長としては納得がいきませんでしたが、トラブルになったとはいえSさんが創業時より貢献してくれたのは確かであり、金額もそれほどではなく、なによりこれ以上争いを長びかせたくなかったため、しぶしぶ退職金を支払うことにしました。

(対応策)
 “別に定める”としているのに定めていない場合、労働条件は正社員と同じであるとみなされます。“別に定める”とした以上は、必ず別規則を作成するか、個人別に労働契約書を作成する必要があります。同様のケースで労働者側勝訴の判例があります。(日本ビクター事件 横浜地 昭41、清風会事件 東京地 昭62)

2.事例条文
(適用除外)

 会社が管理職として処遇する者であって、課長職以上の職位にあるものについては、時間外労働、休日労働、休憩時間の規定を適用しない。

(トラブル内容)
 従業員48名の金属製品製造業のB社は、順調な受注により業績は好調で、連日深夜までの残業が恒常化していました。月の残業時間が100時間を越える者もめずらしくありませんでしたが、社長としては、残業代はきっちりと払っており、賞与も世間並み以上であったため、従業員の不満はないものと思っていました。

 しかし、一代で今の会社を築いた社長は、苦労した分義理人情に厚いのですが、ワンマンなところもあり、社員にまったく不満がなかったわけではありませんでした。

 ある日のこと、社長のところに課長であるYさんが退職したいといってきました。実はYさんは、課長とは名ばかりで、仕事への裁量権はほとんどなく、部下に対する人事権も与えられていません。ワンマンで、細かいことにまでいちいち口をはさんできたり、ミスをすると部下の面前でも激しく叱責するような社長のやり方に不満をもっていました。

 その席でYさんは、「課長になってから3年間深夜残業代をもらっていないので退職時にまとめて払ってほしい」と言い出したのです。それを聞いた社長は顔を真っ赤にして怒り出し、「何を言っているんだ!管理職に残業が付くわけがないだろ!代わりに高い役職手当を払っていただろうが!」とYさんの訴えを一蹴しました。

 社長は管理職といえども、深夜の割増賃金は除外されないことを知らなかったのです。

(結末)
 社長は監督官に、深夜残業分も含めて役職手当を払っているのだと主張しましたが認められませんでした。就業規則のどこにもそのようなことは書かれていないというのが理由です。

 このため社長は、時効となった1年分を除いた、2年分の深夜残業代を支払うよう指導をうけました。さらに、それだけでは済まず、他の管理職分についても同様に2年前までさかのぼって深夜残業代を支払うように言われたのです。

(対応策)
 会社に不満をもって従業員が退職する場合、過去の賃金を請求してくるケースは少なくありません。上記のケースも、役職手当の中に深夜割増分が含まれることを就業規則(賃金規程)で定めておくことで防ぐことができます。さらに規定の内容も、深夜割増分の金額や時間を明示し定める必要があります(ただし、実際の労働時間が定める時間を超えた場合は、別途超えた分の支払いが必要です)。

 また、人件費削減のため管理職とは名ばかりで、ほとんど権限のない“名ばかり管理職”の問題も最近浮上してきました。上記のケースなども当てはまりそうです。管理監督者(管理職)かどうかの判断は一般的に、@出退勤について厳格な規制を受けているか否か、A職務の内容が、ある部門全体の統括的な立場にあるか否か、B部下に対する労務管理上の決定権等について一定の裁量権を有しているか否か、C部下に対する人事考課権限を有しているか否か、Dその地位にふさわしい報酬が支払われているか否か、によって判断されます。これらの基準を満たさない者を管理職だと主張しても、裁判では否定される確率が非常に高いといえます。

3.事例条文
(退職金)
 勤続5年以上の従業員が退職し、又は解雇されたときは、この規程に定めるところにより退職金を支給する。ただし、懲戒解雇をされた者には退職金の全部又は一部を支給しないことがある。

(トラブル内容)
 従業員32名の建設業のC社で、長年経理担当として働いてきたMが定年退職しました。ところが、退職金もすでに支払われた2ヵ月後になってから1,000万円もの会社資金が不明になっていることがわかりました。

 Mを会社に呼んで問い詰めたところ、横領していたことを認めました。会社では真面目で几帳面なMを、社長はすっかり信頼して会社の経理を全面的にまかせていたのです。しかし、私生活ではMはギャンブル狂で消費者金融に多額の借金をしていました。

 社長はMに横領した金と退職金の返還を求めましたが、横領した金を返すことには応じたものの、退職金については「自分は定年退職したのであって、懲戒解雇されたのではない」と言って、返還を拒否しました。

 それを聞いて社長は、「そんな理屈が通用するとでも思っているのか!会社の金を横領したようなやつになんで退職金まで払わなければいけないんだ!」と怒鳴ったのですが・・・。

(結末)
 懲戒解雇以外の事由ですでに退職している場合、それは確定したものとなっています。退職が確定している以上、すでに雇用関係も存在しないわけですから、後になって懲戒解雇事由に該当するような不正が発覚しても、その退職を懲戒解雇とすることはできない、という判例があります。

 つまり事例条文のままでは、Mには定年退職者としての退職金請求権が認められるため、たとえ退職金が支払われる前に不正が発覚したとしても、すでに退職している場合は退職金を支払わねばならず、もちろん支払済みの退職金の返還を求めることはできない可能性があります。

(対応策)
 条文のただし書き以降を、「退職後であっても懲戒解雇に該当する事由が発見された者に対しては、退職金の全部又は一部を支給せず、また支給したものについても返還を求めることができる」という文章に変えることで、返還請求が可能となります。

 しかし実際問題として、上記のようなケースにおいて退職金をすでに支払ってしまった後で取り返すのは、非常に困難な場合が多いのも事実です(金は残っておらず、返済能力もない場合が多い)。訴訟によっても費用と時間ばかりかかるのが現実です。

 ただ、条文の改定とあわせ退職金の支払いまで多少の期間を定めることで、支給日前に不正が発覚した場合は支給をストップできますし、就業規則に記載があることでモラル面での歯止め効果も期待できます。



就業規則で強い会社をつくる
 会社を発展させ、リスクに強い組織を作るためには、しっかりとした就業規則が必要です。しっかりとした就業規則とは、法令を遵守したものであることはもちろん、自社の現状に即した内容となっており、想定されるリスクから会社を守ってくれるものでなければなりません。

 そのため当事務所では、まずヒアリングおよび現状分析を十分に行い、その上で作成した原案に対して、お互いに討議をしながら規定のひとつひとつを決定していくという方式をとっています。時間がかかる作業ではありますが、真に実践的でリスクに強い就業規則を作るためには絶対に必要なことです。

 労働者個人との労働紛争は年々増加の一途をたどっており、会社の存続を左右するような事態に発展するケースも少なくありません。

 法律違反にならないよう“とりあえず作った”というような就業規則ではありませんか?法改正のつど修正はしていますか?従業員に周知せず、どこかにしまいこんだままにしていませんか?就業規則をおろそかにしていると、とんでもないことになる可能性があります。ご不安がございましたら、まずは診断をお受けになることをおすすめします。
                           
                  
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